(写真提供:『マ・エノメーリ』/KADOKAWA)
1992年吉本新喜劇に入団し33年。コメディアン、歌手、舞台など多才な活躍を続けている藤井隆さん。独特の空気感で時代を軽やかに駆け抜ける藤井さんは、日々どんなことを考えているのでしょうか。「人付き合い」「仕事」「生い立ち」など様々なお題に答える形式で綴った書き下ろしエッセイ集『マ・エノメーリ』(KADOKAWA)から、一部を抜粋して紹介します。

Q. 一緒にいる人に楽しんでもらうために、心がけていることはありますか?

先日、空いてる電車で大学生だと思う2人組がドアの前に向かい合って立ち、小声で話してはクスクス、ケラケラと笑っていて仲良くとても楽しそうにしていました。

Aくんはリュックを前に抱えて話しながらもスマホでなにかを検索していて、この後ふたりで行くお店なのか、なにかを見つけてはもうひとりのBくんにプレゼンして見せていました。

Bは手ぶらで検索はAにお任せしながら窓の外で見つけた面白いことをいちいち伝えては「見て!」「聞いて!」とAの検索する手を止めていました。

でもAはBのおしゃべりが好きなようで、とても楽しそうにしていました。

降車駅が近づいて、リュックを前に抱えていたAが荷棚に置いてあったリュックを取り、Bに渡してあげて、Bはダウンコートの後ろの裾を巻き込みながらリュックを背負いました。気づいたAは自分のリュックを背負い直しながらBの裾を直してあげました。そしてふたりは、ふたりとも楽しそうに電車を降りて、次の場所へと進んで行きました。

なんか、これが良いのだと思います。