暴れようが何だろうが施設に入れるしかない
「明日は、お袋の施設入居の契約手続きをしてから来るので、スタート時間が1時間ほど遅くなりますから」
老朽化した下水管の取り替え工事をお願いしていた業者の親方から言われ、
「おかあさん、施設に入居させるのですか?」
思わず前のめりになった。
「そうなんですよ。元々気性の激しい人で、『施設に入れたら、一生恨む』って言われて、カミさんが家で面倒見てたんですけど……。夜中に何度も起こされるとか、このところ以前にも増して手が掛かるようになってきて。少しは弱っておとなしくなるかと思ったら、逆に口うるさくなる一方で。介護鬱って言うんですかね。カミさんが体調を崩して、塞ぎ込むようになってしまって」
「わかります。やってもやっても文句言われたら、誰だって堪えますよね」
「そうなんですよ。このままだとカミさんが参っちゃうと思って、お袋が暴れようが何だろうが施設に入れるしかないと思って」
「それはそうですよ」
私は全力で頷いていた。