総務省が2024年9月に発表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、日本人のおよそ10人に1人が80歳以上と推計されるそうです。高齢者の介護をする人も増えるなか、自分の両親と子どものいない叔母夫婦4人の介護を経験したフリーライター・こかじさらさんは、「高齢者介護にきれいごとは通用しない」と語ります。今回は、こかじさんの著書『実際に介護した人は葬式では泣かない』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。
たいへんなのは我が家だけではない
ウチの老父母が特別にやっかいなのかと思いきや、そうでもないらしい。
同年代の知人友人と話をすると、まあ出てくること出てくること。
「ウチの父親の暴言が日に日に激しくなって……」
「ウチの姑ったら、絶対人の言うことを聞かないのよね」
どこも同じような問題を抱えている。
近所に住む幼馴染みは、毎日車を飛ばしてパチンコへ行く87歳の父親の車体が凹んでいるのを見つけ、背筋が寒くなったとのこと。
「もしかして、どこかにぶつけたの?」
「ぶつけてねーよ」
「じゃあ、何で凹んでるのよ」
ドライブレコーダーをチェックすると、路地から幹線道路に出たとき接触事故を起こしていたことが判明する。相手も高齢者で、話し合いで解決したらしいのだが……。
「もう怖いから、免許証を返納して」
「車がないとパチンコに行けなくなるだろ」
「パチンコと人の命と、どっちが大事なのよ! もし事故を起こしたら、娘が近くにいて、何で免許証を返納させなかったのかって、責められるのは私なんだよ!」
頭から湯気が出るほどの勢いで大喧嘩をしたと、腹立たしげに話していた。