身に覚えがあり過ぎる
会社員時代、ストレスによる突発性難聴に苦しんでいた同僚がいたことを思い出し、早いほうがいいだろう、と急いで耳鼻科に向かうと、
「検査の結果は特に問題ないようですが、何か強烈なストレスを感じるようなことはありませんでしたか? 耳はとても繊細な器官ですので、ストレスが原因ということも……」
医師からそう告げられる。
「実は……」
身に覚えがあり過ぎるとは、こういうことだ。
認知症が進み、寝たきりになった高齢者の介護のたいへんさは色々なところで語られてはいるが。実は、ウチの老父母のような寝たきりではないが、本人たちだけでの自立生活は困難。足腰はおぼつかなくなっているにもかかわらず、口だけは達者。さらには、人の言うことには意地でも耳を傾けない。そんな要支援1から要介護2あたりの高齢者との同居のほうがずっと心身共に疲弊するのではないだろうか。
※本稿は、『実際に介護した人は葬式では泣かない』(双葉社)の一部を再編集したものです。
『実際に介護した人は葬式では泣かない』(著:こかじさら/双葉社)
自分の両親と子どものいない叔母夫婦4人の介護を経験した著者が、その実態を赤裸々に綴る。
「早くお迎えが来て下さい」と祈ってしまうのはあなただけじゃない、あなたは悪くない、と介護者の気持ちを軽くしてくれる、「大介護時代」必読のエッセイ。