稲作の歴史は、雑草との戦いの歴史だった

「ということは……」

岡山さんがひらめいた。

「弥生時代の水田も、耕すことで、雑草の発生を防げた可能性があります」

「そうだね。耕すということは、雑草を防除する上で、当時はとても意味のある作業だったと言えるかもしれない」

そもそも、イネには陸稲という種類もあり、畑でも育てることができる。それを、わざわざ水路を引いて、田んぼに水を入れるのは、雑草の発生を抑えるためである。もちろん、田んぼにも雑草は生えるが、水を入れたり抜いたりする田んぼの環境に生えることのできる植物は少ない。田んぼに水を入れることで、そこに生える雑草の種類を劇的に減らすことができるのだ。

また、イネの種を直接播くのではなく、苗を育てて田植えをするのも雑草対策である。イネの苗を大きくしてから田んぼに植えることで、雑草に対するイネのアドバンテージを高めようとしているのである。手植えで田植えをしていた昔は、苗を大きくしてから、田んぼに植えていたが、除草剤が開発された今では、小さな苗を田んぼに植えることができるようになった。

稲作の歴史は、雑草との戦いの歴史だったのだ。「田んぼの雑草」という特殊な雑草が少なかった時代は、耕すことは効果的な雑草防除法だったに違いない。