右から、みうらじゅんさん、清水ミチコさん、安齋肇さん(撮影:大河内禎)
みうらじゅんさんの本の装幀を安齋肇さんが手がけたり、ともにポルノ映画を製作したり、「勝手に観光協会」を結成したり。長きにわたる名コンビで知られるおふたりと落ち合ったのは、東京・築地本願寺。二人の「不審者」トークはまだまだ続きます――(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎)

〈前編よりつづく

「悪いこと」から一番遠いところにいるのに

みうら ある銀行の、振り込め詐欺の注意喚起のために描かれてる犯人の顔のイラストが、どう見てもオレなのはどうしてかねえ。

安齋 いまだに偏見があるんだろうな、長髪とかサングラスに対して。

みうら 空港でも必ず取り調べを受けるしね。こないだ中国に行った時も、ゴムヘビをたくさん買ったからなあ。

清水 ゴムヘビ? ゴムでできたヘビ?

みうら 集めてるんですよ(笑)。あんなの金属探知機にひっかからないじゃない、だってゴムだもの。ただ荷物検査に通した時にヘビのシルエットが映ったんだろうね。これはなんだ、と聞いてるようだったから、「ラバースネーク」って答えたんだけど。流暢な英語でね(笑)。そしたらその「ラバー」をどうやら恋人と受け取ったらしくて、係員、ヘラヘラ笑いながらトランク開けて。オレ、目の前で捨てられちゃったんだよ。

清水 ヘンなもの買うからバチが当たった。(笑)

安齋 オレも長髪に無精ひげでグァムに行った時、麻薬犬がやってきて。麻薬犬が興味ない顔でオレから離れても、係の人が「もっと嗅げ、もっと嗅げ」って犬の頭をオレになすりつけるの。

清水 ぼんやりしてたら、犯人に仕立てられそう。

安齋 それでトランクを開けることになったんだけど、仕事道具の絵の具や筆のほかに、石膏の粉の入った大きな袋が3つも入ってたんだよね。

清水 あははは。あやしい! 何に使うつもりだったの?

安齋 成型してそこに絵を描こうと思ってたから。それを見た瞬間、向こうは「やったー!」みたいな顔してた。でも不思議なもので、あまりにずっと疑われてると、だんだん自信なくなってくるのよ。オレはもしかして運び屋なのかな、って(笑)。みうらくんもオレも、あらゆる「悪いこと」から一番遠いところにいるのにね。

清水 そうだよね。実はこんな気の弱い人たちなのに。