舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第10回は「暮らしを潤す、花と料理」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
歩く先が僕の庭
僕の生活には花が欠かせません。引っ越す前に住んでいたマンションのベランダには、40個近くのプランターを置いていたんだよ。今のベランダは狭いのでちょっと寂しい。
でも、前のマンションから唯一持ってきたミニ胡蝶蘭を置いているんです。これは、いただいてずいぶん経つにもかかわらず何度も花を咲かせているの。一緒に引っ越ししてきて、さすがにもうダメかなと思いながら水をあげていたら、また蕾が出てきた。嬉しかったね。
胡蝶蘭を育てるのは難しいと言われるけど、僕はただ水をあげているだけ。そんな大したことはしていない。父が庭いじりが好きだったから、似たのかなと思ったりはする。
たくさんプランターがあったときも、ガーデニングみたいな大層なことをしていたわけじゃなく(笑)、何ならどこかから種が飛んできて勝手に花を咲かせることもあったくらいで。そこにまた感動していたんだ。
そして、その咲いた花を切って活けて、玄関や居間に飾り、仏様にお供えする。帰ってきてドアを開けたときもそうだけど、部屋に花があるとないとじゃ気分が全然違うんだよね。旅公演に出ている間も、長男の優汰に「お前のセンスでいいから花を買ってきて」と頼んで飾ってもらっていました。