ピアノも高校の時から習い始めて、音楽大学に行きたくて上京した際には、下宿先にピアノまで送ってもらってね(笑)。半年くらい浪人生活をしていましたけど、音大を卒業しても将来何になるのかが見えない。
もともと僕には人前で歌ったり芝居したりしたい、という潜在意識があったものですから、アルバイト先――新宿の喫茶店の友だちと劇団四季の研究所を受けたら、僕だけが受かって。よくある話ですけどね。
試験は、まず最近の四季の芝居の感想文ですね。日生劇場で観た『アンフィトリオン38』(モリエール作)。一応喜劇と書いてあるんですけど、お客さんも半分の入りで、誰も笑わない(笑)。それで正直に、面白くなかった、よくわからなかった、と書きました。
次が実技。歌の試験で、前の人のが聞こえるんだけど、ピアノ伴奏がずいぶんヘッタクソだなと思って(笑)。それでギターを持って入り、「弾き語りしてもよろしいですか?」と断って、「シバの女王」というのを歌いました。
あとで聞くと、浅利さんはそうでもなかったみたいですけど、看板女優だった藤野節子さんが「あの子、声もなかなかだし面白そうよね」と言ってくださったみたいです。
ですから第1の転機は、20歳で劇団四季に入った、ということですね。