(撮影:岡本隆史)
演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第43回は俳優の鹿賀丈史さん。少年合唱団ではソプラノだったという鹿賀さん。音楽大学に行くために上京した鹿賀さんは、浪人中に劇団四季の研究所を受けてみることにしたそうで――。(撮影:岡本隆史)

人前で歌い、芝居をしたい

舞台映えのする個性的な顔立ちと堂々とした体躯、メリハリのある台詞術とやや低めの美声で、演劇に映像に、ミュージカルにと活躍が続いている鹿賀丈史さん。

スタートは劇団四季入団2年目にいきなり『ロックオペラ イエス・キリスト=スーパースター』の主役、ジーザス・クライスト役を獲得したこと。その後の躍進ぶりはめざましい。

「鹿賀丈史」の芸名は、劇団四季代表の浅利慶太氏により名づけられた。出身地(石川県金沢市)の加賀にちなんで「鹿賀」、四季の名優・日下武史にあやかって「丈史」。これだけで最初からどれだけ逸材と思われていたかがわかる。

少年時代、鹿賀さんは美しいボーイソプラノだったという。

――金沢にいた頃、少年合唱団に入っていて、高校の時には合唱部で歌ってました。

僕は成長が遅くて、高校に入った時は160センチだったのに、卒業する時には178センチだったんですよ。中学1年まで少年合唱団にいてソプラノだったのに、声がちょっと出にくくなってきて、2年たって高校の合唱部に入った時はもうバリトンでした。