ずっと好きだった服が「似合わなくなった」と感じたとき
ときどき、「若い頃に好きだった服が似合わなくなって寂しい」という声を聞くことがあります。私も同じように思うことがあるので、気持ちはよくわかります。でも、それは時計の針を巻き戻せないのと同じように、どうしようもないこと。
食事や運動、美容皮膚科で施術を受けたりして、時計の針を遅らせることはできるかもしれません。それでも若い頃にまとっていた服と、現在の体や皮膚感はズレていきます。もちろんこれは私の主観であり、すべての人がそうだというわけではありません。
40代後半の頃、それまで好きで着ていたのに似合わなくなったと気づいたアイテムがあります。膝小僧が見える丈のスカートです。
これは20代の頃からの私のアイデンティティーのようなアイテムであり、それをマニッシュに着るのが自分らしいと思っていました。それなのに、突然そのアイテムと自分にズレが生じていることに気づいたのです。
そのときの寂しさは、ひと言では言い表せません。でもそれ以上に、鏡に映っている自分を見て「無理して若ぶっているように見えるかも……。だったら、そっちのほうが嫌かも」と思ったのです。それ以来、スカート丈は膝小僧の少し下が私の定番の丈となり、ミニスカートは処分することにしました。
もう1つ処分したアイテムがあります。それはノースリーブの服。この原因はハッキリしていて、二の腕のつけ根の皮膚にハリ感がなくなってきたからです。それらの服は単にデザインが好きだったから着ていただけだったので、わざわざ自分の衰えをアピールすることもないと、あっさり手放すことができました。
このように書くと、「そんなに人の目を気にする必要はないのでは?」「好きな服を好きなように着ればいいんじゃない?」と思う人もいることでしょう。確かに、そのとおりでしょう。でも私は、服は似合ってこそ価値があるし、だからこそ自分に自信をもてたり、自分を好きになったりすることができる。それが洋服の役目だと思うし、だから、わざわざ似合わなくなった服を着る必要はないと思うのです。