「また何かあったのでは」という不安
「ニュースで性犯罪の事件を取り上げていると、『もしかして息子が再犯したのでは』と思ってしまう」「仕事からの帰りがいつもより遅いと、逮捕されたのではないかと思ってしまい気が休まらない」という声は家族会でも頻繁に寄せられます。
とくに警察官が地域パトロールの一環などで自宅を訪問した場合、たとえ自分とは関係のない事案であっても、加害者家族は激しく動揺します。「また何かあったのでは」という不安で一瞬にしてパニックになり、血の気が引いて、その日は落ち着かない状態で過ごした、と打ち明ける家族もいました。
事件後は日常会話の持つ意味も大きく変化します。たとえば「いってらっしゃい。気をつけてね」という何気ない言葉。日常的なやりとりですが、事件後、家族は「もう二度と同じ過ちは繰り返さないで」という切実な思いと覚悟を込めてその言葉を交わすようになるのです。
※本稿は、『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(著:斉藤章佳/朝日新聞出版)
あらゆる犯罪のなかでも、とくに世間から白眼視されがちな「性犯罪の加害者家族」の悲惨な“生き地獄”とは?
家族が償うべき「罪」はあるのか?
1000人を超える性犯罪の加害者家族と向き合い続ける専門家が、支援の現場からその実態を報告する。