(写真提供:Photo AC)
親世代の高齢化や終活の内容の煩雑化が進んだ近年では、親世代が終活を一人で行うのは困難になってきています。そんななか、これまで終活に関する1000件以上の相談に対応してきた弁護士・伊藤勝彦さんは、家族一体となって親の終活に取り組む「親子終活」を勧めています。今回は、伊藤さんの著書『モメない相続でお金も心もすっきり!親子終活』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。

終活を通して子どもに意思を伝えられる

皆さんのなかには、親子終活は一般的な終活と比べて、どんな利点があるのだろうかと感じている人もいらっしゃるかもしれません。

ここで親子終活の3つの利点をご説明します。

1つ目は、親の希望や意向通りに遺産整理が進められる点です。実際にあった事例でお話ししましょう。

木村太さん(82歳)は、昭和30年代からの落語のパンフレットを大事に収集してきました。学生時代、落研に所属していて落語が大好きだった木村さんは、中華屋のバイトで稼いだお金のほとんどを、落語に回していたそうです。

集めた落語のパンフレットは、木村さんの思い出というだけでなく、貴重な演芸史としての価値も持っていました。しかし、その価値の分からない人にとっては、ただの紙の束でしかありません。

木村さんは、「生きている間は手元に置いておきたいが、亡くなった後は価値の分かる人に引き継いでほしい」という思いを家族に伝えました。そして、同好の士への形見分けを行い、一部は博物館への寄贈も叶いました。