バレエに出会わせてくれた神様に、心から感謝を
私たち一家4人の住まいは、一戸建ての市営住宅。キッチンが広く、庭には藤棚に、ビワや桃の木がたくさんあり、毎年たわわに実が生(な)ります。桃は虫に食われないように、新聞紙にくるんで大切に育てていました。
小さい頃はとても身体が弱く、最初の記憶は夜中に病院に連れていかれたことかもしれません。2歳くらいの時には小児結核にかかり、昼も夜も体調を崩すとお医者様に診ていただきました。親は大変だったことでしょう。そして3歳になった時、行きつけの小児科の畑川先生が「何か運動をさせてみては」と提案してくださいました。
体が弱いので遠くには通えません。その時ちょうど偶然にも家の前にある栄光幼稚園にできたバレエ教室の門をたたきました。園の放課後の時間、広島のバレエ界の草分けでいらした葉室潔(はむろきよし)先生がお教室を開かれていたのです。
《葉室潔さん(1918~99年)は米国生まれ。ソウルに移住後、日舞、バレエを習い、45年の終戦で広島に引き揚げてバレエ研究所を開設した。原爆を主題にした舞踊を創作したほか、独自の解釈でストラヴィンスキー作曲の『春の祭典』を上演した》
これが運命の出会い、体操教室だったら、私の人生は全く変わっていた。神様が「あなたはバレエをやるんですよ」と巡り合わせてくださったのではないかと思います。バレエに出会わせてくれた神様に、心から感謝しています。