こういう映画を創ろうとしている人たちがいる限り、日本映画も捨てたもんじゃない――熱い思いを淡々と吐露するのは、俳優のオダギリジョーさんだ。役者という枠を超えて活躍を続ける、その原点とは(構成:篠藤ゆり 撮影:小林ばく)
機が熟して映画監督デビュー
転機となったのは2017年、香港・マレーシア・日本の合作映画『宵闇真珠』に参加したことでした。
監督のクリストファー・ドイルは、香港映画界の巨匠ウォン・カーウァイ監督や僕が敬愛するジム・ジャームッシュ監督など、世界的な監督たちとタッグを組んできた伝説の撮影監督。クリスとはいろいろな面で相性がよく、友達のような関係性が築けたんです。
ある時クリスが「ジョーは映画を創ったほうがいい。その時はオレがカメラをやるから」と言ってくれた。その言葉に甘えてというか、背中を押され、十数年前に書いた脚本を引っ張り出してきて、書き直して撮ったのが、19年に公開された『ある船頭の話』でした。
でも、相当プレッシャーを感じていたんでしょうね。撮影期間中は食事も喉を通らなくなり、数え切れないほど口内炎もできました……。ただ、その気合いのお陰か、ヴェネチア国際映画祭にも選出され、ただの俳優が撮った作品というレッテルからは乖離できたと思っています。
その後、NHKでテレビドラマなども手掛けましたが、やはり映像を創る側に回るとけっこう自分にプレッシャーをかけてしまい、体調を崩しがちなんです。
それなら日頃、体調管理のために何かやっているかというと、……実は何もしていません。最近はスポーツもしなくなったし、食事もそれほど気にしていない。そのせいなのかはわかりませんが、ここ数年、紫外線アレルギーになってしまい困っています。
ただ、撮影となると、太陽の下に出なくてはいけないこともあります。7月公開の映画『夏の砂の上』はほとんどが屋外撮影だったので、スタッフの方々にものすごくフォローしていただきました。