プロデューサーとはいえ、実際に僕がやったことは、監督補に近いですね。ロケハンから始まり、編集や音作業など、仕上げの最後まで、行けるところはすべて参加しました。時には飲みながら、玉田真也監督とはたくさん話して。
監督は自身が主宰する劇団でもこの作品に取り組んでおり、とにかく思いが熱い。こちらが飽きるくらいしゃべってくれた(笑)。
とはいえ今回は映画として、舞台とは違う視点で、自分の映画哲学や美意識に基づくアイデアを惜しまず出させてもらいましたし、監督が実現したい世界観をサポートしようと努めました。
ロケ地の長崎は、中心に海があり、山に囲まれ、どこにカメラを向けても絵になる町。細い路地や、坂を上ったところに家があるのもこの町の魅力です。
登場人物は、坂や階段を上らないと家に帰れない。その風景が、何があっても人生は続いていくということを語っているようで、視覚的にも、人生の厳しさや美しさを表せたのではないかと思っています。
マンガ原作や、テレビドラマの映画化などが多い日本映画の中で、『夏の砂の上』にかかわれたことは幸せでした。こういう映画を創ろうとしている人たちがいる限り、日本映画も捨てたもんじゃないと思えた。
僕が映画に深くかかわっていた2000年代初頭ですら、日本映画は今よりずっと多様性がありました。それがこの20年でそういった個性はどんどん失われていき、残念に思っていたんです。
海外の映画祭関係者や映画ファンと話をすると、やはりあの頃の日本映画が好きだった、と言われることが多いんですね。『夏の砂の上』のような作品をもっと世界に送り出したい。そのために、微力ながらもお手伝いすることがあるなら、これほど嬉しいことはないと、今、改めて感じています。