「僕は秘密主義で、自分の中を見透かされるのが嫌い。だからまぁ、スレてるんですよ、人間の観察の仕方が。誰も目をつけないような出来損ないの要素にすごい惹かれる」(撮影:岡本隆史)
演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続けるスターたち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第8回は俳優の橋爪功さん。俳優・演出家の芥川比呂志さんと出会ったことが大きな転機で、ずっと芥川さんの腰巾着でしたと語る橋爪さん。芥川さんに一度だけ号泣させられたことがあったそうで――。(撮影:岡本隆史)

<前編よりつづく

入院先にこれ幸いと会いに行って

芥川比呂志さんの話をもっと……。私は何度もお会いしているが、酒席に同席の経験はない。その酒乱の噂はつとに有名だが。

――どこか寂しがり屋なんだね。だから自分を好いてくれる人に、心までは開かないけどまぁまぁつきあいはしてくれる。酒乱は凄まじかったですよ。仲谷昇さんや小池朝雄さんくらいになると、わりと上手に逃げるんだけど、こっちは若いからいつまでもぶらさがっていて、被害に遭う。

もう完膚なきまでに叩きつぶされますからね。その人の一番の弱みをグイグイえぐり出すのがものすごくうまい。僕は一回だけ号泣しましたからね、旅先で。その後は免疫が出来たんで大丈夫だった。

だって、次の日になるとものすごく上手に謝るの。可愛い顔して、「ごめんなぁ」って(笑)。それで許せちゃう。まぁ、絶交するとも言えないしね。