秘密主義ゆえにインタビュー嫌いの橋爪さん。誰も人を見透かすことなどできはしないのに。以前お断りされて今回ようやくお会いできたが、さすがにお話はありきたりでなく面白かった。

それで、第三の転機は?

――70歳を過ぎてから、虚構というものにますます惹かれるようになった、ことかな。

子どものころから自分の中にずうっと流れてる秘密というか、虚構というか、があって、それが今、自分が面白がる虚構というものとリンクするんじゃないか。そこに恐れはあるんだけど、そこを通らなくては生きていけないんじゃないか、っていう非常に謙虚な気持ちに今なってる。いいこと言うね、俺。(笑)

ちょっとのっぴきならない虚構を何とか自分の中に取り込んで、そういうドラマの中の人物を今演じたい。そういえば、『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』って、オダギリジョーさん作・演出のNHKドラマに出たんですが、僕の役がとっ散らかってて、すげえ面白い。一貫性がまったくなくて、シークエンスごとにまったく異なる虚構が用意してあって、そこに取り込まれるのが、快感。(笑)

言ってみれば根っこがないんだね、だから虚構に縋るしかない。もう、これわかる人は少ないだろうけど、昔ね、片岡千恵蔵さんの「七つの顔の男」という映画のシリーズがあって、全部違うキャラクターで面白いのよ。

それからダニー・ケイの『虹を掴む男』っていうのは、自分がぼおーっと夢見てるとその人物になって映画の中に出てきちゃう。僕はああいうのに憧れてるのかもしれないな。

 

はぐらかすかに見せて、率直に語っていただいたと思う。
今後、ますますの変化球に期待します。

――虚構って、ある意味で怖いよね。俺の中には何もないからそういう虚構に縋るしかないわけよ。それがバレるのが怖い。ちっちゃいときから、それがバレるとまずいな、ってどっかで思ってたのかもしれない。だからその分余計に、虚構の中に情熱を持って突き進む……ような気がする。何か、すごい話してるね、俺。