(イラスト:マツモトヨーコ)

黒井さんは「自分の老いの〈仕舞い方〉について、気にかかるのは、それがマワリの人たちに迷惑をかけなければ良いが……」と書いておられました。「今日はアレをカタヅケル仕事に着手しなければ、と天井を仰ぎ、毎晩、ベッドを見下ろしながら、やはり今日も何も出来なかったな、と溜息をつくばかり」とも……。

やはり黒井さんは、今もマジメな方なのですね。私は中途半端な人間なので、ろくに決着もつけず、すべて放り出しています。片づけはあきらめて、大量の書類や資料は家を建て替えた際に段ボールに詰めたまま、部屋の隅に放置。私には一人娘がおりますが、片づけ費用と迷惑かけ費用として多少のお金は残せそうなので、それでチャラにしてもらうつもりです。

いいじゃありませんか、多少、迷惑をかけても。ときには歯を食いしばって子どもを育て、ここまで生きた人間の特権でもあるのですから。

せつなかったのは、老いの問題を語り合おうと友人から誘われたのに、その友人が急病に襲われ、あっという間に亡くなってしまったというくだりでした。私も、歳を重ねるにつれて別れが増えていきました。

寂しいことではありますが、私はそうした別れは、長く生きた人間が支払う《税金》のようなもの、と捉えています。もし、これからさらに長生きをするとなると、私たちはおのずと《高額納税者》にならざるをえません。