米海軍の友人の疑問
海上自衛隊には年次主義に基づく2年ルールが旧海軍から引き継がれているが、例外はある。2年よりさらに短く、1年、ひどい場合は1年足らずで異動させるケースもあるのだ。こうした現象は、友軍の米海軍からは奇異の目で見られることになる。
私が護衛艦隊司令部の幕僚長を務めていたころだから、1990年代後半の話だ。ある日、在日米海軍の友人から呼ばれた。彼とはツーカーで、なんでも話せる仲だった。
「なあ、ヨウジ、聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「自衛艦隊司令官が交代するんだって? 辞める司令官は不祥事でもやらかしたのか?」
「いや、そんなことはない」
「まだ着任してから10カ月しか経っていないだろ? 海上自衛隊は戦闘部隊のトップを10カ月で辞めさせるのか?」
「……」
確かに彼が言う通り、自衛艦隊司令官は海上自衛隊の戦闘部隊を一手に束ねる現場のトップだ。野球で言えば、不動のエースが自衛艦隊司令官と言ってもいい。その司令官がわずか10カ月で代わるのは、外からは異常事態のように見えるだろう。