(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
1945年8月15日の終戦から、2025年で80年を迎えます。その後、国防のために創設されたのが自衛隊ですが、元・海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)である香田洋二さんは、「規律一辺倒の自己批判なき現在の自衛隊に一抹の不安を覚える」と語ります。今回は、香田さんの著書『自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。

米軍の本音中の本音

私は2010年から2018年までの間、米海軍大学が発行する『Naval War College Review』という機関誌の掲載論文の審査員を務めていた。これは世界各国の海軍関係者、軍事研究者、戦史研究者が目を通す権威ある学術誌で、論文を掲載するためには複数の専門家の審査をパスしなければならない。

私は日本とアジアに関する論文を読み、「掲載に値する」「掲載に値しない」「補強すれば掲載に値する」というジャッジを下し、その理由も付して編集部に返すという仕事をしていた。

私が審査した論文の中には、現役の米軍人が自衛隊について論じたものも含まれていた。日米の共同訓練などの際には、米軍は「自衛隊はよくやっている」「頼りになる」などと言ってくれるのだが、雑誌に投稿する論考となると、当たり前だが完全な本音ベースで書かれているわけで、米軍がどのように自衛隊を見ているのかがあからさまになる。

ある論文では米海兵隊の中佐が日本の南西諸島防衛について論じていた。論文執筆者は陸上自衛隊との共同訓練の経験もあるのだが、彼が疑問に感じたのが陸上自衛隊の階級構成だった。陸上自衛隊は、ある程度経験を積んだ陸曹が多い。ところが、困難な状況に直面した際に、陸曹の下で黙々と任務に専念することを期待される陸士となると、圧倒的に人数が少ないというのだ。彼はそれを「トップ・ヘビー(重心が上部にある)」と嘆いていた。