海上自衛隊の一大改革にチャレンジした
実は、海上自衛隊でも同じようなことがあった。
海上自衛隊では長らく、戦闘部隊の基本単位である「護衛隊」は1隊につき2~3隻の護衛艦が所属し、それぞれの艦長を務めるのは2等海佐、この2~3隻を束ねる護衛隊司令が1等海佐であった。
しかし、これでは2隻隊の場合、1隻が修理に従事すれば、護衛隊司令と艦長が同じ船に乗っているということになり、何のために護衛隊司令がいるのか分からなくなる。さらに、国際標準では、大佐が率いる「隊」は4隻から6隻を擁するというのが通り相場だ。
当然のことながら、2隻の艦を率いる場合と、4~6隻の艦を率いる場合では、求められる知識、経験、力量は異なる。日米協議の場で海上自衛隊の1等海佐と米海軍の大佐が話し合うとなれば、相手の言っていることがよく理解できなかったり、お互いに「合意した」と思っていても実は全然違うことを考えていたりしたという結末に終わりかねない。
ちなみに、海上自衛隊は、私の時代に世界水準に合わせるように改変している。かねてからこうした問題意識を持っていた私は、海上幕僚監部防衛課長として防衛力整備計画を担当していた1990年代後半に一大改革にチャレンジした。護衛隊に所属する艦を4隻に増やすため、水増しをやめて護衛艦隊所属の護衛隊数を3分の2として、1個護衛隊を4隻編制とする案を策定した。
もちろん、1佐の配置数減に直結するこの案には部内の抵抗も強く実現には数年を要した。最終的には、私が防衛部長離任後の2004年に改定された中期防衛力整備計画で、各護衛隊群の下に2個護衛隊を置き、各護衛隊には護衛艦4隻を配する編制に改めることとされ、ようやく実現した。この時、護衛艦部隊の元締めである護衛艦隊司令官であった私は、ようやく海上自衛隊の護衛隊が世界水準になったとの深い感慨に浸った覚えがある。
この結果、海上自衛隊の1等海佐は米海軍の大佐と同じような経験を積むことができるようになった。いわば“共通語”で話せるようになったということだ。航空自衛隊も1個飛行隊は約18機が所属しており、米空軍との齟齬はない。また、海空自衛隊で同格の護衛艦艦長と飛行隊長は共に2佐であり、部隊規模は国際標準でも名と体が一致している。