陸上自衛隊はガラパゴス化が起きている
これに対し、陸上自衛隊は国際標準とは関係なく部隊編成を行うガラパゴス化が起きているのは前述した通りだ。海上自衛隊、航空自衛隊と比較すれば、陸上自衛隊の特殊性を理解していただけるのではないだろうか。
ここまで述べた陸上自衛隊の部隊長の階級について整理しておこう。
前述のように、陸上自衛隊では師団長が陸将、旅団長や主な団長が陸将補である。これは諸外国の陸軍とは事情が異なる。現在、一部の国を除き、師団長は少将、旅団長は少将の1階級下に位置する准将である。ところが、自衛隊に「准将」という階級が存在しない。このため、海外では准将が指揮する旅団などは少将に当たる陸将補、少将が指揮する師団は中将に相当する陸将が務めている。
こうした陸上自衛隊の人事は旧陸軍の伝統を引き継いだものだ。とはいえ、旧陸軍とは異なり、陸上自衛隊の師団や旅団の規模はかなり小規模であるのは既に述べた通りだ。つまり、外国軍では少将が指揮する師団であっても、陸上自衛隊では中将が指揮し、しかも師団の規模は旅団以下のレベルにとどまっているといういびつな状況なのだ。
ちなみに、海空自衛隊の護衛艦隊や航空方面隊司令官は海将や空将(中将に相当)、護衛隊群司令や航空団司令は海将補や空将補(少将に相当)が務めている。護衛隊群司令や航空団司令のレベルであれば少将ではなく准将が務める場合もあるが、海空自衛隊の配置は国際標準に沿っている。
この際、海空自衛隊についてもより国際標準に沿った形にすることも考え、准将を新設し、陸自の旅団長、海自の護衛隊群司令、空自の航空団司令等に当てることが適当であろう。
※本稿は、『自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実』(著:香田洋二/中央公論新社)
戦後80年間の平和に浴し、自衛隊は有事に闘えない組織になってはいないか。
「これは、誰かが言わなければならないことだ」。
元・海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)が危機感と使命感で立ち上がった。