自衛隊の本質から大きく外れる
この関連では、さらに深刻な話もある。陸上自衛隊は那覇市に司令部を置く第15旅団を南西諸島有事が発生した場合の初動担任部隊と位置付けているが、現在の人員は約2500人だ。これに1個連隊を追加して師団に格上げすることになった。
これは全く構わないのだが、問題はその規模だ。新たに生まれる「第15師団」は3000人規模になるという。これでは陸上自衛隊の特殊な基準に当てはめても、旅団レベル、しかも小さめの旅団ということになってしまう。米軍から見れば連隊レベルの代物であり、師団はおろか旅団と呼ぶのも憚られる規模だ。
第15旅団を指揮する旅団長は陸将補、つまり少将である。これに対し、第15師団に格上げされれば陸将が師団長を務めることになる。この場合の陸将は、米軍で言えば中将ということになる。同じ沖縄で海兵隊の第3海兵遠征軍を率いるのは中将である。第15旅団の格上げは、司令官の階級をそろえることが狙いだとも報道されている。
つまり、第15旅団の格上げは、純粋に戦闘力を強化するための措置ではないというわけだ。自衛隊と米軍の組織図を見比べたときに均衡がとれているように見えて美しいかもしれないが、我が国防衛のための戦闘を旨とする自衛隊の本質から大きく外れるものといわれても仕方がない。
米海兵隊や米陸軍の指揮官が「陸上自衛隊は沖縄に師団を置いている」と聞けば、少なくとも1万人以上の大規模部隊が駐屯していると誤解してもおかしくない。こうした認識のギャップが「戦場の霧」をさらに濃くしてしまうことを私は懸念する。