「息子を見ていて感じるんですけど、子どもってもともと生命力が備わっていて、勝手に大きくなる。それは、親が育てて大きくした、なんてものではない」

湧き上がってきた妻への感謝

こんな月日を過ごしたことで、僕の中でちょっとした変化が生まれました。自分の妻に対して、こんなに大変なことをずっとやり続けてくれていたのか、と感謝の念が湧き上がってきたんです(笑)。

だから、夜、皿を洗っておこうかな、とふと思ったり。僕が皿をそのままにしておいたら、あとで妻が洗うことになる。だったら、いま洗っておこう、みたいな小さなことですけれど、変化は確実にありましたね。

息子に対しても、宿題をせずにテレビを見ていたら、「先に宿題をやりなさい」と一言。そういうことは妻にまかせてきたんですが、僕も親だし、やっぱり少しは言わなければいけないと思うようになりました。

それにしても、家族や血のつながりってなんなのでしょうね。健一は、自分が男手ひとつで娘を育ててきたとは思っておらず、娘を優しい子に育ててくれたのは、「これまでに出会ったすべての人」だと感じている。

僕も、その通りだと思うんです。息子を見ていて感じるんですけど、子どもってもともと生命力が備わっていて、勝手に大きくなる。それは、親が育てて大きくした、なんてものではない。親にできるのはサポートだけ……いや、親も含めて周りの人間、学校、会社、それから社会にできるのは、サポートだけなんだな、と。

だから、血がつながっているかどうかは大きな問題ではないんじゃないかな。例えば、僕は一緒に仕事をしているマネージャーも家族のようなものに感じる。一緒にいて、お互いが必要で、手を差し伸べることができるなら、それでいいのではないか、と思いました。