「俳優である僕だからこそできることがあるはず。そう思って、とにかくいまは必死で取り組んでいます」(撮影:小林ばく)
新型コロナウィルスの影響で公開日が延期されていた、山田孝之主演の映画『ステップ』が7月17日に公開されることになった。山田さんは今回、初めてシングルファザー役に挑戦する。勇者から闇金業者、『全裸監督』まで、映像作品によって新たな面を見せる山田さん。さらに俳優だけでなく、プロデューサー、社長業と活動の幅を広げる、その真意とは。今年3月に行ったインタビューを配信する。(構成=平林理恵 撮影=小林ばく)

20代は我慢のときだった

15歳のときに鹿児島から上京し、16でこの世界に入って20年になります。幅広い役柄をやらせてもらい、さまざまな経験を積むことができました。いまの僕は俳優の仕事を十分に楽しめているし、やりたいと思ったことは、何でもどんどんチャレンジできる環境にいる。本当にありがたいことだと思います。

でも振り返ってみると、20代まではどこか気持ちが閉じていて、壁を作って周りを寄せつけないところがあった。もちろん楽しい出来事はいっぱいあったし、いい作品にも出合えたんですよ。でも、総じて考えると、20代は我慢のときだったのかな。

それが、30代になったらとにかく楽しくなってきました。メジャーな作品からマニアックな作品まで、映画、ドラマ問わず出演することができたし、プロデューサーとしても作品にかかわれた。さらに俳優を目指す人のための新しいメディア「ミラーライアー」の立ち上げに参画し、スターとファンとをつなぐライブコマース(ライブ動画を見ながら商品を購入できる通販)事業を行う会社「ミーアンドスターズ」も設立しました。

新しく始めたこれらの活動はすべて俳優業につながっていて、同業者やこれから俳優を志す人たちが仕事をしやすくなることを目指しています。俳優である僕だからこそできることがあるはず。そう思って、とにかくいまは必死で取り組んでいます。

そんなとき、飯塚健監督からやってみないかと誘われたのが、映画『ステップ』の健一役でした。30歳の若さで妻に突然先立たれ、1歳半の娘とともに生きていくという役柄です。妻を失い、娘を育てるという経験はしたことがない。でも脚本を読んで、僕にとってこの役を演じることが必要に思えたのでオファーをお受けしました。