(写真提供:Photo AC)
「小さくも強い赤ちゃんの世話を一身に担うことで、親の脳にどのような変化が起こるのかを科学者たちは数多く明らかにしてきた」と話すのは、ピュリッツアー賞を受賞したジャーナリストのチェルシー・コナボイさんです。妊娠と出産によって、親の脳にはどのような影響があるのでしょうか?今回は、チェルシーさんの著書『奇跡の母親脳』から、人類の脳と育児の謎に迫ったレポートを一部ご紹介します。

父親の脳の変化

出産する側の親は、妊娠・出産、急激なホルモンの変化、新生児の命を左右する授乳と世話、そしてそれらに付随する社会的期待に、選択の余地がないと感じがちだ。一方、出産しない側にとって、親になることはより意識的な選択だ。だが、これも生物学的レベルで大きな変化をもたらす選択だ。

人間の父親による育児が、いつどのように始まったかは実のところよくわかっていない。哺乳類では、父性は様々な過程を経て何度も進化してきた。人類の祖先ではおそらくつがいの絆(ペアボンディング)、つまり長期的な交配の発達と共に生まれたのだろう。

ただ、父親による育児が普遍的でないことが問題を複雑にしている。専門的には「義務的ではなく任意的」とされ、父親は常に存在するわけではなく、状況次第であることが多い。古今を問わず父親の関与度は物理的な距離、資源、夫婦の関係性、他に育児に関わる者がいるかいないかなどに左右されてきた。

サラ・ブラファー・ハーディは「男性による子育ては、わずかだったり多かったり、全くなかったりする」と述べている。人間の子作りと子育てのパターンは非常に多様なのだ。しかし、父親には、妊婦や赤ちゃんと一緒に過ごすことで、生理学的な変化が起こる。「私にとってこれは、男性による育児が長い間、人間の適応に不可欠だったことを意味しています」と彼女は言う。