一方、妹は母と暮らすことに憧れていたようで、80代で一人暮らしをしていた母を妹夫婦と姪夫婦が住んでいる家に呼び寄せたのです。

昔から「私のモノは私のモノ、あなたのモノも私のモノ」というタイプの母でしたから、いかにも波瀾含みでしたが、気丈な妹だから大丈夫だろうと、私は内心「ラッキー!」とも思っていたのです。

ところがある日、妹から連絡が入り、「自己中心的すぎるママとは暮らせない! 今すぐ引き取ってほしい」と悲痛な声で頼まれました。母の譲らない性格のせいでストレスが限界に達したのでしょう。

母は、お世話してくれるなら誰でもいいと、あっけらかんとしているようでしたが、私は一緒に暮らす勇気も自信もありませんでした。でも、そのときは嫌と言える雰囲気ではなくて……。

結局のところ、私が車で迎えに行き、その日のうちに母は身の回りの荷物と一緒にわが家へ転がり込んできたのです。突如として40年以上も離れて暮らしていた母との同居が始まったのは、2018年。母はまだまだ元気な86歳、私が57歳のときのことでした。