「父・明智光秀が信長を殺害した報い」が我が身に…
父・明智光秀が信長を殺害した報いが、いまや我が身にも降りかかってきたのだと、ガラシャは静かに呟く。
「天の裁きとは恐ろしいもの。もはやこれまで」
最期の言葉として南無阿弥陀仏と唱えると、ガラシャは刀を胸に突き立て、静かに前のめりに倒れる。
その物音を聞きつけた女房たちは、悲鳴を上げながら広間へと駆け出す。
「お上様が……、なんということ」
年寄衆に事の次第を泣きながら告げる女房たち。
「最期の姿を一目見届けねば。腹を切って御供をするのが侍の本分」
年寄衆は女房たちを先導役として、台所から奥へと向かう。そこで目にしたのは、血の川となって流れる凄惨な光景。あまりの衝撃に二度と直視することもできない。
「なんと……、なんと……」
言葉では言い表せないほどの悲しみと衝撃が、その場を包む。
そうこうしているうちに、家臣の一人である稲富伊賀はすでに逃げ去っていた。年寄衆三人は、あちこちに火を放ち、すべてを無常の煙となすことを決意したのだ。