死の間際まで厳格にわきまえられた礼節

この逸話は、戦国武家の女性の自害において見られた所作と男女の礼儀について、いくつかの興味深い点を示しています。

原文には「御ぐしを手つからきりきりと上へ巻上させ給へ」とあり、みずから介錯を受けるための準備として、首を切らせる際に髪が邪魔にならないよう、また死後の見苦しさを避けるために、みずから髪を丁寧に巻き上げるという所作が描かれています。

小笠原少斎に「そのままではいけません」と指摘されたガラシャは、胸元の小袖を左右に開いています。これは女性の自害における作法の一つとして、心臓を突くという方法のために必要な所作でした。

男性の切腹とは異なり、女性の場合は首を切るか心臓を突くという方法で行われたことがわかります。

なお、ガラシャと少斎は同じ部屋にいるのではなく、わざわざ敷居を挟んで別々の部屋からやりとりをしています。

家臣である少斎には、主君の夫人の御座の間に入ることが許されていませんでした。そのため、ガラシャに敷居の近くまで移動するよう依頼しています。これは、身分の上下関係と男女の礼節の両方に考慮した行動です。

以上のように、戦国期における武家の女性の自害には、男性とは異なる作法があったことがわかります。