現在発売中の『婦人公論』4月23日号で、表紙を飾っていただいている柚希礼音さん。実は、表紙には2度目のご登場になります。​前回は、宝塚歌劇団を退団された翌年の2016年。当時の率直な気持ちが溢れ出るインタビューを再掲します。現在発売中の4月23日号とあわせてお楽しみください。

ニューヨークで私、取り残されてない?

宝塚歌劇団を退団して、もうすぐ1年が経つのですね。でもまだ、男役が抜けていません。舞台上で「女」としているのは、何から何まで大変! 今日も撮影の合間に、つい男らしく大股開きで座ってしまって。

宝塚時代は仲間やファンの皆さんに盛り立てていただいたからこそ、自分の力以上のことができ、トップの座で輝かせていただけた。一人で世間に飛び出し、自分自身と向き合うなかで、改めてそのありがたさを実感しました。

正直言って退団後、葛藤も挫折も経験しました。でもそのおかげで、退団後初のソロコンサートでは、パワーアップした柚希礼音として皆様の前に立てるはず。新たな道を進み始めた、等身大の今の姿を見ていただければと思います。

宝塚歌劇団を退団後、ブロードウェイミュージカルの新作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』の準備のため、2015年7月から3ヵ月間、ニューヨークで暮らしました。舞台の稽古が始まるまでの約2ヵ月は、英語と歌、ダンスのレッスンを受ける日々。レッスンの時間以外は誰ともしゃべらず、食事もすべてひとりで。

宝塚時代は、公演へ向けてひと月かけて稽古して作品を仕上げ、本番に臨むことの繰り返しでしたので、目的地が見えない状態で歌やダンスのレッスンだけを続けるのが、こんなにつらいとは思わなくて。やってもやってもちっとも前に進んでいる気がしなくて不安になるし、孤独も加わって、精神的に追い詰められていきました。

ニューヨークという街は、やる気に満ちた状態ならパワーをもらえる場所ですが、ちょっと気持ちが落ちた状態になると、けっこうきつい場所です。何だか街を行く人々のスピードについていけず、自分が取り残されているような気がしてしまう。

何とか気を取り直そうと、ティファニーで指輪を買ったりしました。公演が終わった時のご褒美を前もって買っておいて、お守りがわりに毎日つけていたのです。