ウィーンのカフェ セントラルにて(写真提供:『これが規格外の楽しみ方! たくおん式なるほどクラシック』/KADOKAWA)
ストリートピアノや動画配信でクラシック音楽への関心が高まっている昨今。YouTubeチャンネル「TAKU-音 TV たくおん」での総再生回数1億超え、公演チケットが3分で完売など、世間の注目を集めているピアニスト・石井琢磨さん。そんな石井さんが、クラシック音楽の魅力と新しい楽しみ方を提案した著書『これが規格外の楽しみ方! たくおん式なるほどクラシック』より、一部を抜粋して紹介します。石井さんが愛してやまない、ピアニストとしてはもちろん、作曲家としても歴史に名を残した音楽家たちとは――。

あらゆるジャンルで傑作を量産
W. A.モーツァルト(1756-1791)

(画像提供:『これが規格外の楽しみ方! たくおん式なるほどクラシック』/KADOKAWA/イラスト:ショスたこ)
誰もが知るいわゆる天才! 古典派の時代に活躍し、交響曲、協奏曲、オペラ、宗教曲など、あらゆるジャンルで数多くの傑作を生みだした。25歳からウィーンで演奏家、作曲家としてめざましい活躍をしたが、最後は貧困のうちに35歳の若さで亡くなった。


◆早熟の天才とステージパパの名コンビ

みなさんもモーツァルトという作曲家について、「神童」という表現が使われているのをどこかで目にしたことがあるでしょう。モーツァルト少年が6歳になる頃には、すでに鍵盤奏者(※)としてヨーロッパ中に名声を轟かせていたというのです。

僕も間違いなく、モーツァルトは1000年に一人の天才だと思っています。SNSやインターネットのない時代に幼い少年がヨーロッパ中に名声を轟かせたという事実は、もはや奇跡に近いですよね。

でも、いくら天才少年といっても幼いモーツァルト君が一人で自分を売り込んでいたわけではなく、背後でその機会をしっかりセッティングしていたお父さん、レオポルトの存在が大きかったと思います。いわゆる元祖プロモーター。いわゆる《ステージパパ》です。

モーツァルトは幼い頃から元宮廷音楽家だったお父さんに連れられて、ヨーロッパ各地に演奏旅行に出かけていました。その過密なツアースケジュールの内容といい、そこで出会う人々の顔ぶれといい、ステイタスといい、仕込みが見事。要するに、モーツァルトパパは各地の王侯貴族に才能あふれる息子を売り込んで、よい就職先を探し歩いていたわけです。

神童の出現に加えてステージパパのマッチングですから、その相乗効果たるや、さぞすごかったでしょう。

※当時の鍵盤楽器はハープシコード、あるいはチェンバロであり、いわゆるピアノではなかったため鍵盤奏者とする。