魔術師のようにピアノを操る
F.リスト(1811-1886)

(画像提供:『これが規格外の楽しみ方! たくおん式なるほどクラシック』/KADOKAWA/イラスト:ショスたこ)
ハンガリーに生まれ、エステルハージ侯爵家で働く父から最初の音楽教育を受け、早くから才能を発揮。その後ウィーン、パリへと渡り、ピアニストとして活躍した。同時に作曲の技術を磨き、高度な演奏技術を必要とする数々のピアノ曲や交響詩などを創作。

◆希代のモテ男

リストはモテる。弾けばとにかくモテる。というか、モテ系の曲を数多く書いているんですね。とにかくかっこイイ。技巧的に難易度が高い作品は古今東西いっぱいあるけれど、そんなにむずかしくなくてもむずかしそうに聴こえる、いわゆる《聴き映え》する技法をメチャクチャ使ってくれているのがリストなんです。

たとえば、両手同時にオクターブがあったとして、一気に弾こうとするとかなり手指と腕の力を要しますよね。しかしリストは、右手と左手を交互に入れ替えるように書いてくれる。すると、一気にオクターブで弾くより少量の力で打楽器的な派手なパフォーマンス的要素が表現できるし、物理的にもブワッと音を広げて鳴らすことができます。こういうふうに、ちょっとひねりを効かせた効果的な奏法で、いわゆる聴覚にも視覚にも《弾き映える》曲をたくさん書いたわけです。

また、当時、リストは社交界の花形で、どこに行っても貴族の婦人や良家の奥様に囲まれていました。今でいうロックスター、いやアイドル的な存在だったともいわれています。

一説によると、彼がピアノを演奏すると失神してしまう女性もいたとか。目にも鮮やかな超絶技巧的パフォーマンスだけではなく、即興的な演奏もうまかったようですから、テレビアイドルなんて存在しない時代には本当にスター的存在だったのでしょう。