◆魔術師のようにピアノの鍵盤を操る
もちろん、モテ男ぶりだけじゃなくて、ピアニストとしてのリストの真価も素晴らしく、彼自身が魔術師のようにピアノの鍵盤を操れたからこそ、あの名作『ラ・カンパネラ』みたいな名曲が次々と生みだされていったんですね。
最近、この曲は小学生でも簡単そうに演奏している映像がYouTubeなんかにもアップされていますが、いやいや、本当にむずかしいんですよ。僕も『ファウストのワルツ』や『ハンガリー狂詩曲』のようなリストの超技巧的作品をよく演奏するのですが、本当に「悪魔が乗り移ってくれないと演奏できないんじゃない?」みたいな感覚を覚えますね。
ふだんの僕は、ステージの上でもつねに自らの演奏する姿を客観的に頭に描き、冷静でいるように心がけているのですが、ことリスト作品となると、「なんとかゾーンに入らないとヤバい!」という焦りが出てくる。「いかになりふり構わず悪魔的に作品に没頭できるか」ということばかりを考えてしまうんです。じゃないと本当に弾けないんですよ!
「ラ・カンパネラ」なんて最たるもので、一発勝負でホームランが打てるか打てないか、ハマるかハマらないかみたいな思いで演奏しなくてはならないので、本当に生きた心地がしない。「ホームランじゃなくて、バントでもイイじゃないの」って自分に言い聞かせるんですが、それでもコントロールが効かないんです。
今は少し成長して、精神的にも大人になったので、バント作戦で改めて『ラ・カンパネラ』に挑戦してみたいですね。