それで29歳で四季を辞めて、30歳の時に松田優作さん主演の『野獣死すべし』という作品で、主人公の相棒の役で映画デビューしました。
優作さんは僕より一個年上で、当時もう映画のトップスターでしたからね。2人で銀行強盗に入るシーンなんかで、「おい鹿賀」「はい、なんでしょう」「そういう芝居すると俺と似ちゃうから、別の芝居しろよな」とか。
村川透監督も結構、優作さんのアイデアを取り入れてました。それで制作発表の時に「監督も俺と組んでるうちに、なんか巨匠になっちゃって」なんて優作さんが言うんで(笑)、面白いなぁ、四季ではそんなこと誰も言わないから別世界だな、と思いましたね。
それから和田誠さんはね、『麻雀放浪記』という映画が初めての監督作ですから、これに懸けてたみたいで、毎日絵コンテを描いて来られる。こういうサイズでこういうカットを撮ります、というのを撮影所の入口のドアに貼り出してくださるので、非常にわかりやすくてありがたかったですね。
あの時、出目徳役の高品格さんとドサ健役の僕の2人が日本アカデミー賞の助演男優賞に選ばれて。最優秀賞は高品さんになったんですけど、考えてみると今の僕は、あの時の高品さんより年上になってるかもしれない(笑)。
やっぱり近頃の日本人は確かに若くなっているというか、あの頃は老け方が今と違うんですよね、男も女も。