「自己中」でもなく「自己犠牲」でもなく「自利利他」

近年、「他を蹴落として自分だけが成功すればいい」という自己中な考えが批判の対象となり、「利他」という言葉が広がりを見せています。それは、利他学という学問が生まれるほど社会的に評価されるようになりました。これは素晴らしいことです。

しかし行きすぎると、自己犠牲へとつながり、結果として自分自身を消耗させて長続きしない。

たとえば、仕事において他者の期待に応えようと無理をし続けると、疲弊し、最終的には仕事のパフォーマンスも低下してしまいます。

一方で、「自利」をしっかりと持ち、それを満たしたうえで他者のために行動すると、持続可能な形で利他の精神を発揮できます。

このように、仏教では「自利利他」という考え方が重要視されています。

これは、自分を犠牲にしてまで他者に尽くすのではなく、自分の幸福も他者の幸福も同時に追求するバランスの取れた生き方です。

「自利利他」は、「自分のため」と「他者のため」を対立させるものではなく、両方を満たすものです。自分の幸せを大切にしながら、他者にも貢献する。このバランスが取れた時、人は無理なく社会の中で生きられるのです。