「人間国宝」で現代歌舞伎界至高の女形、坂東玉三郎さんが主演した舞台『源氏物語 六条御息所の巻』がシネマ歌舞伎となり、9月26日から全国公開される。光源氏を演じたのは、《歌舞伎界のプリンス》と話題の市川染五郎さん。映画公開を前に、玉三郎さんが会見し、六条御息所という女性について、川染五郎さんに伝えたこと、シネマ化するまでの“舞台裏”、歌舞伎界の変化、そして「芝居とは」までを縦横に語った。前回の続きをお届けする。(取材・文:山田道子 写真提供:松竹株式会社)
孫ほど歳の離れた光源氏の染五郎さん
――シネマ歌舞伎の冒頭の特別インタビューで、玉三郎さんは染五郎さんについて「本当に若くて『時の花』。舞台当時は19歳。若い時の光源氏そのままのような気がいたします」と振り返っている。玉三郎さんと染五郎さんは8月に歌舞伎座で上演された『火の鳥』でも共演した。
ここ10年くらい、何か新しい戯曲が生まれればいいなと思ってきました。新しい歌舞伎様式の戯曲がなかなかできない時代なので考えていたのです。『源氏物語 六条御息所の巻』も『火の鳥』も何年か前に書いてもらっていたものです。
染五郎さんを偶然見た時、光源氏がいいのではないかと感じ、『源氏物語 六条御息所の巻』を出してきて、役者に当てて書き直してもらいました。染五郎さんは孫みたいな歳ですが、「幕が開いたら、先輩とか後輩とか年齢というものは考えないでね」と言ったら、染五郎君は考えずに演じてくれました。稽古場では、「おじさまのご意見は?」と尋ねるので、私は「役者としての意見はあるけれども、あなたの意見は何?」って聞くと、はっきり自分の意見を言うようになりました。