朝食の食パンから高級ベーカリーのこだわりパンまで、パンは私たちの日常に欠かせない存在ですが、その世界を深堀りしてみると、さらなる魅力が発見できるかもしれません。今回は、共に大のパン好きであるというNPO法人新麦コレクション理事長・池田浩明さんと編集者・瑞穂日和さんの著書『パンビジネス』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。瑞穂さんによると、苦手な人が多いという「酸っぱいパン」は、組み合わせる素材次第でおいしく味わえるそうで――。
ハード系の酸っぱいパンは少なくなった?
毎日3食パンでもまったく平気。実際、1年365日のうち300日はパンを食べていて、「3度の飯はパンがいい」と豪語しているほどです。いつからそんなにパンが好きなの?とよく聞かれますが、それはもう子どものころから。小学生のときには「朝ごはんがパンじゃないと起きられない」と言っていたくらいで、母にはずいぶん苦労をかけたと思います。
当時は近所のパン屋さんで買った食パンや、母が焼いてくれたアニメーション『アルプスの少女ハイジ』に出てきそうな白いパンが定番でした。
中学生になるころには、ハード系の食事パンを扱うパン屋さんが近所にオープンしたことで、頻繁に自分でパンを買いに行くようになり、すでにパン中心の生活がすっかり定着していました。今でも覚えているのですが、そのころ(あまり書きたくないですが、20年以上前)のカンパーニュ(田舎パン)は、今よりずっと酸っぱかったということです。
当時はまだ長時間発酵や高加水の技術が広まっていなかった時代で、自家培養のパン種も、もしかするとあまり状態がよくなかったのかもしれません。それに、ライ麦を使ったパンが多かった記憶もあり、それが酸味を強調していた一因かもしれない、と今では思います。
そんなわけで、大学生になるまで私は「ハード系=酸っぱいもの」と思い込んでいた節がありました。でも、最近はどうでしょう。ハード系でも酸っぱいパンって少なくなったと思いませんか?