酸味はうま味、ちょっと苦手を味方に付ける方法
さらに、酸味には食欲を刺激する働きもあります。唾液の分泌を促して、料理を食べたいという気持ちを引き出してくれるのです。食欲がわかない暑い日でも、酢やレモンを使った料理はさっぱりとして食べやすく、香りも相まって食卓を華やかに演出してくれます。
これって、すべてパンにも当てはまると思いませんか? 特にカンパーニュのようなハード系は、それだけをむしゃむしゃ食べるタイプのパンではありません。多くの場合、なにかと合わせて楽しむことが前提のパンです。他の食材と合わせるとき、酸味はうま味となって素材とパンの相性を高めてくれます。いわば、味の“接着剤”のような存在。それが酸味の役割だと私は思っているのです。
酸味のあるハード系のパンでも、たとえばデンマークで定番のバターとハード系のチーズを合わせた「BMO(Bolle med ostの略でデンマーク語でチーズを挟んだパンを指す)」にすると、思わず唸るおいしさに。
ほかにもレバーペーストをひと塗りするだけでコクが深まり、オーブンでローストした野菜を乗せれば、素材の甘みがパンと調和して豊かな一皿に仕上がります。シンプルなバターとはちみつの組み合わせでも、酸味との対比で甘さが際立つのがおもしろいところです。