ライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間勤務しながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります
怪談よりもシンデレラ物語と階段が怖かった
NHKの連続テレビ小説『ばけばけ』の第1回で、主人公の小泉セツ(高石あかり※高ははしごだか)が『耳なし芳一』の話をしているシーンを見て思い出した。私が幼い頃、父は部屋を暗くし、蝋燭の明かりが自分の顎のあたりに当たるようにして、私より4歳年上の兄とその友人たちを集め、様々な怪談話をした。兄も友人たちも「怖いよ」、「夜、眠れなくなる」と話していた。
私は怪談話を面白いと思い、母が読んでくれる本の『シンデレラ』の意地悪な継母と連れ子の姉妹の方が怖かった。私は夜中に目が覚めると、母が死んだら継母が来ていじめられると不安になり、起き上がって、眠っている母を揺り動かし、生存確認をした。たびたびなので、母は私に起こす理由を聞いていた。母は「生きています!」と大声で言い、再び眠り、私も安心して眠った。子供の勘で、後妻を狙う父の愛人を察知していたのかもしれない。
意地悪な継母と共に怖かったのが、階段だった。幼稚園児の時に、家の階段から足を滑らせて落ち、途中で止まれずに転がる時が怖かった。幸い無傷だったが、恐怖は心に残った。