
台湾旅行で出会った女性
先日、夫婦で台湾旅行に出かけた。今まで海外旅行に一度も行けなかった私たち。子どもが独立し、夫婦ともども定年退職を迎えたので、さて行こうとしたところ、コロナ禍がやってきて、今まで延び延びになってしまった。
いよいよ出発日。燃油サーチャージもない格安航空会社を使うツアーで申し込んだため、添乗員なしで現地の空港までは自力で行かねばならない。飛行機に乗るのも一苦労。高雄の空港で添乗員さんを見つけた時はほっとした。
総勢37人の、シニア世代が大半のツアーである。参加者はすぐに仲良くなり、身の上話をし、助け合うようになった。これがツアー旅行の醍醐味かもしれない。
私はひとり参加らしい高齢女性に話しかけてみた。赤い帽子に白のTシャツとジーンズ。荷物はリュックのみ。それなりのお歳に見えるが、背筋はすっと伸びている。名前はAさん。歳を聞けば、91歳だという。
彼女の2人の娘は60代で、私と同世代。長女はトム・クルーズばりの美青年と恋愛結婚したが、やがて離婚したそうだ。2人の孫、さらには4人のひ孫ができたが「4人もいたら大変だよ」と、そう嬉しくもない様子。「孫もひ孫も私をATMとしか見てないからね」と辛辣な言葉を吐く。
次女は独身で、Aさんと一緒に住んでいるそうだ。働いていて、家事一切は母であるAさんがこなしている。単調な毎日の気晴らしが、年に2度の旅行。今回が初めての海外旅行だという。
緑内障を患って視力は落ちているが、医者の了解のもと、副作用のある点眼薬や内服薬をやめた。観光コースには石段を昇るところもあったが、ほかの参加者から遅れることがない。一同感心するばかりであった。
年齢に関係なく颯爽と生きる彼女との出会いが、この旅の一番の収穫かもしれない。私もあやかりたいと強く思った。