ひとりのお供を決めておく

注文後、特にかしこまらない、いわゆる大衆店なら自分の時間に没頭してもいいでしょう。私はだいたい電子書籍を持参して、飲みながら読書をしています。とはいえ、酔うと内容を全く覚えていないことが多いので、酒場では軽いエッセイか、複雑でないミステリーがいいでしょう。

ひとりの時のアイテムは人それぞれ。以前、「dancyu」(2024年7月号)で南インド料理を世に広めるだけではなく、エッセイストとしても有名な稲田俊輔さん、食に関する多くの素晴らしい著書を持つ井川直子さんと「ひとり食べ」がテーマの鼎談をしたのですが、井川さんはメニューを眺めるのが好きだそうで、「メニューって文学だと思う」とおっしゃっていました。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

確かに個性のあるメニューは面白く、飽きないんですよね。最近の居酒屋系は特にメニュー名で勝負をしようとしているので、改めて見てみてください。ポテサラ一つとっても個性が爆発しています。“**流”、“大人の”といったものから、焼きポテサラ、桃色ポテサラ、とろけるポテサラ……。先日はついに「ふつうのポテサラ」というメニューにも出合い、なんだか新鮮でした。

ちなみに稲田さんは、キャリーバッグを持参するそうです。「私は出張中でこの店に来ました。決して友達がいないわけではありません」という、店に対してのアリバイ作りのためだと。ひとりでお店に入る勇気のない人にはおすすめということでした。

いずれにせよ、ひとりの時のお供を決めておくと、より楽しめるのは確かです。