低くて速いトスをうまく打つことを武器とする選手もいる。
でも私は真逆で、自分が跳べる一番高いところから打ちたいコースに打って勝負したい。そのために里(大輔)さんの厳しいトレーニングを重ねて、思い描く身体や動きを手に入れてきた。
トスが低くなってしまえば、ボールを点でしかとらえられないので打てるコースは限られるし、前に高さで勝るブロッカーがいれば攻めようがない。練習中からセナには「もっと高くしてほしい」と常に要求してきたし、「勝負所で低くなると、私だけじゃなくスパイカーはきついよ」と伝えてきた。
そして真面目で献身的なセナも、スパイカーの要求に応えようと、一生懸命練習を重ねてきた。チームとしての武器を活かせるように。私もチームの中のひとつのパーツなのだから、最大限自分の武器を発揮できるように、という一心だった。でも、そんなことを繰り返してきたある日、眞鍋さんにこう言われた。
「紗理那、そんなに要求ばかりしていたらセッターが怖がる。笑え」
一瞬、耳を疑った。
私の言い方が悪かったとか、日本チームでやろうとしているコンセプトに反しているから「修正しろ」と言われるならばまだわかる。そうじゃない。
「怖がる」
「笑え」