上段右から、上野千鶴子さん、樋口恵子さん、井上輝子さん、奥山妙子さん。下段右から、望月衣塑子さん、柳原恵さん、濱田すみれさん、渡邉愛里さん(写真提供:WAN/望月さんのみ撮影:婦人公論編集部)

韓国文学、フラワーデモ、#KuTooなどで、いまフェミニズムが熱い盛り上がりを見せています。月刊誌の特集テーマに取り上げられたり、フェミニズム専門の出版社も立ち上がるなど、若い世代の新しい動きが活発に。そんな流れを、1960年代から女性運動に参加してきたフェミニズムの先輩世代はどう見ているのでしょうか。上野千鶴子さんが代表を務めるNPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)のイベントで新旧両世代が語り合った様子を報告します(取材・文=婦人公論編集部)

◆公開講演会「女性解放をめざした先輩たちと出会う-フェミニズムを引き継ぐために」

2019年10月19日、立教大学にてWAN(ウィメンズアクションネットワーク)主催の公開講演会「ミニコミに学ぶ『婦人問題懇話会(会報)』編・女性解放をめざした先輩たちと出会う-フェミニズムを引き継ぐために」が行われました。

婦人問題懇話会とは、1962年から2001年にかけて女性解放をめざして研究や討論、活動を続けた団体です。

その会報をめぐって、3部構成で識者がトークと討論を行いました。第1部は、「『婦人問題懇話会(会報)』が発信したもの」をテーマに、かつて会員として活動した女性たちが発表しました。第2部は、「若い世代が読み解く『婦人問題懇話会(会報)』」をテーマに、20代から40代の女性たちが各々話しました。第3部は、上野千鶴子さん(WAN理事長・東京大学名誉教授)の司会で、第1,2部の登壇者7名が「婦人問題懇話会の歴史をどう引き継ぐか?」と題してディスカッションを行います。

<イベントのプログラム>
第1部「『婦人問題懇話会(会報)』が発信したもの」(婦人問題懇話会の元会員たちによるトーク)
 赤松良子さん(日本ユニセフ協会会長=メッセージのみの参加)
 樋口恵子さん(高齢社会をよくする女性の会理事長)
 井上輝子さん(和光大学名誉教授)
 奥山妙子さん(杉並区議会議員)

第2部「若い世代が読み解く婦人問題懇話会(会報)」(若手によるトーク)
 望月衣塑子さん(東京新聞記者)
 柳原恵さん(日本学術振興会特別研究員PD[立教大学])
 濱田すみれさん(アジア女性資料センター事務局)
 渡邉愛里さん(行政書士事務所メーヴェ代表)

第3部「婦人問題懇話会の歴史をどう引き継ぐか?」(第1部、第2部登壇者とのディスカッション)
 司会・上野千鶴子さん(WAN理事長・東京大学名誉教授)

ここでは第3部の様子をご紹介します。


50年あとに生まれて、あなたの立場に立ちたかった

まず、WAN代表の上野千鶴子さん(71歳)が、若手話者4名と会場に「婦人問題懇話会がこの世にあることを知っていましたか」、と問いかけました。するとジェンダー研究者の柳原恵さん(35歳)以外は、このイベントのために目を通すことになるまで知らなかったという結果に、聴衆や元会員たちからはざわめきが。それを受けて上野さんは、この場は「若い人たちが歴史と出会う場」であると述べます。

東京新聞記者の望月衣塑子さん(45歳)は、第2部で、自身が日頃とりくんでいる菅官房長官への質問について、身振り手振りを交えながらエネルギッシュなトークを展開しました。上野さんはまさにそのパフォーマンス自体が、望月さんと それより上の“お姉さま”“おばさま”世代との差を「くっきりはっきり」と表していると指摘。かつては、女性が新聞の社会部や政治部の記者になることは稀だったという事実に言及します。

すると、婦問懇元会員で評論家の樋口恵子さん(87歳)が挙手。樋口さんは第1部において、かつて女性だからという理由で就職に苦労し、ようやく出版社にもぐりこみ、婦人問題懇話会にも参加したと話していました。

「望月さんを見て私は悔しくてしょうがない。私は50年あとに生まれて、あなたの立場に立ちたかった。女と男を公平に扱ってくれたら私は絶対に大新聞社の記者に合格した。足にぴったりのズボンを履いて国会内を有名政治家を追い回して、彼らをぎゃふんと言わせる記事を書きたかった。羨ましいです。だから頑張ってください」。それを受けて望月さんは「今、記者のなかに樋口さんがいなくて良かった(笑)」。この日1番といっていいほど会場が湧きます。