現在の名刺の状況と昭和50年代の就職難の女性たち
自分の名刺を最近作ってもらった会社に電話すると、「今の時代は、会社で働く女性の名刺を、男性用より小さくして欲しいという注文はないです。フリーランスの女性も標準サイズで、こだわるのは文字の配置とかデザイン。一回り小さいサイズや角丸の名刺も作れますが、割り増し料金です」と言われた。
ほかの会社に電話してみたら、「会社員の方も自営業の方も、男女を問わず標準サイズが多い。でも、フリーランスや自分を特に印象付けたい方は、男女を問わず、標準サイズ以外にすることもあります」と教えてくれた。
芸妓さん、舞妓さんがお客さんに渡す、柄が美しい「花名刺」は、角が丸くなくても一回り小さいサイズだ。料理店の女将をしている友人に聞いてみた。彼女の母親は料亭を経営していたので、彼女は女将や芸妓さんたちの世界にも詳しい。「一回り小さい名刺の方が、奥ゆかしくて、おしゃれに見えるでしょ」と、彼女は話していた。「奥ゆかしい」という言葉を、私は久々に聞いた。確かに、視覚的に「奥ゆかしさ」は感じられる。
さて、男性中心の昭和のビジネス社会を考えると、「女性社員は男性社員よりも半歩さがって、素直で優しく」という、男性の願いが込められている気がする。
私が大学を卒業した昭和51年は、オイル・ショックのあおりで不景気で就職難。その影響以外に、女子大生は嫌われていた。大学の求人広告を見て会社説明会や面接に行くと「4年制大学の女性は生意気だからいらない」「求人広告は宣伝に出しただけ。大学出の優秀な男性がいればいい。女子大生など誰が雇うか」と言われ、私は耐えた。
しかし、昭和50年代に、短期大学を卒業して企業に就職した女性たちの中にも理不尽なことを言われた人たちがいた。「『結婚したら辞めます』と約束させられた」「女性は職場の華なので2年で辞めるのが条件だった」「『男性のように勤務年数と経験で給料を上げられないから、女性は25歳までに辞めてくれ』と言われた」などである。
