20代は暗黒時代だった

女優って、自分の言葉でしゃべらなくてもいいんですよね。セリフがあって、自分で練習できて、それを間にして人とやりとりできる。それは私に合っていたんだと思います。だからセリフがなく、自分の言葉で話すバラエティ番組なんて私にとってはとんでもないわけです(笑)。昔、さんまさんの番組に出させていただいた時にほとんどしゃべれず、しかも声が小さいのでいじられて落ち込んだこともありました。

この仕事をやめようと思ったことは一度もありませんが、私のような人間がこのまま女優を続けていていいんだろうかと思ったことは何度もあります。子役の時は、きちんとセリフが言えただけでも褒められた。でも年齢が上がるごとに求められるものが変化してきたし、20代は自信を失って、というより一度も自信を持ったことがないまま生きてきたことに気付いて、この先やっていけるのかという不安しかなかった。私の20代は暗黒時代です。(笑)

7歳からこの世界に入り、10代でNHKの朝ドラや金八先生に出演したので、ほかの職業を目指したことも調べたこともありません。最近、娘の小学校で「自分の将来について考えましょう」という授業があり、娘が「私に似合うお仕事ってなんだと思う?」って聞いてきたんです。「ごめんね~。ママ、女優以外のお仕事のこと、まったく知らないんだよね」というしかなくて…(笑)。周りのいろんな人に聞いてみたら?と伝えました。

女優の仕事を続ける以上、役をどう表現していけばいいか、悩み続けるんだろうと思います。理想としては、いただいた人物、いただいたセリフだけど、それを星野真里が演じているのではなく、映像や舞台上で「生身の人間」として存在できたらいいなあと思うんです。子どものころに感じた「ウソがマコトになる瞬間」っていうのかな? 最終的に私が目指してるのはそこじゃないかな、と。

今回の役は、私の実年齢よりはかなり高い設定です。でも、今、44歳になってみて、まだまだ幼稚だし、自分が44歳であることにも違和感があるほどです。おそらく10年後もそんなに意識は変わらないだろうなあと思うので、無理に作りこまず、年齢にはこだわらずに演じたいです。

星野真里さんと娘さん
星野さんとピースサインをするふうかさん(写真提供:星野さん)