苦しくなってしまった時(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)
国内のルイ・ヴィトンで販売員として活躍し、11年目には顧客数で全国1位を記録した土井美和さん。その接客スタイルは、目の前の商品だけでなく「お客様の未来」を見据えたものでした。「販売員は、商品を売る人ではなく、ブランドの世界観を伝える存在」。そう語る土井さんが、自身の経験をもとに、言葉遣いや身だしなみ、所作に込めた《接客の極意》を綴った著書『「自分」というブランドを売る 元ルイ・ヴィトン トップ販売員が大切にしてきたこと』から、一部を抜粋してお届けします。

暗く長いトンネルを抜けた先に、見えたもの

高校時代のアルバイトで「接客業」に魅力を感じ、「接客を極めたいという人にぜひ来てほしい」というルイ・ヴィトンジャパンの就職説明会の言葉に心打たれて、販売員人生をスタートした私。

19年間の販売員人生は、今振り返っても幸せな記憶であり、私の基盤となる多くスキルや人との繋がりをいただいた、かけがえのない時間でした。

ですがここで、接客の楽しさも販売員としての喜びも、完全に見失ってしまった時の話をしたいと思います。

長年、新宿高島屋店で勤務していた私にとって、全てのカテゴリーを取り扱うフラッグシップ店でチャレンジしてみたいという想いがずっとありました。

入社から15年半経った頃、ようやくそのチャンスが巡ってきて、表参道店への異動が決まりました。私にとって心から望んだ異動であり、憧れていたお店に立てるのが嬉しくて、毎日がとても新鮮だったことを思い出します。

ただ、毎月訪れていた身体のリズムが、気づけば異動後から半年以上も止まり、初めての異動が、自分にとって想像以上にプレッシャーだったのだと気づきました。