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年を重ねるにつれて腰が曲がるのは、自然なことだと思っていませんか。そのまま放置すると、腰痛や足のしびれ、内臓障害など全身の症状につながり、精神面に悪影響を及ぼすことも。検査とトレーニングでしっかり予防・改善しましょう(構成:古川美穂 イラスト:銀杏早苗)

仕方がないとあきらめないで

昔から、背骨が曲がりお辞儀をしたような状態になる、いわゆる「腰曲がり」に悩む高齢の方は、一定数いらっしゃいました。けれどそういう方々は「年だから仕方がない」とあきらめて、家に閉じこもってしまう傾向があり、これまで悩みが見えづらくなっていたのです。

しかし海外では違います。たとえば私がカナダで脊椎外科研修を受けたとき、積極的な治療によって患者さんが見違えるほど回復する姿をたくさん目にしたのです。それ以来、「腰曲がりは治療できる病気である」というスタンスで、多くの患者さんに向き合ってきました。

近年は外出意欲の高い活動的な高齢の方が増えています。それなのに日本では患者・医師の双方に「腰曲がりは病気」だという認識がないため、湿布だけ処方されて治らないまま年を重ねてしまうケースも多いのです。

腰曲がりが改善した患者さんたちは一様に、とても明るく前向きになります。家族や友達と旅行に出かけるようになったり、諦めていたさまざまなやりたいことにチャレンジしたりする姿は印象的で、私自身も日々励まされているのです。

そもそも、「腰曲がり」とはどういう状態なのかご存じでしょうか。健康な背骨は、横から見ると緩やかなS字状のカーブを描いています。しかし生まれつき、あるいは後天的に背骨が変形することがあるのです。横から見て、お辞儀したように前に曲がった状態が「後弯症(こうわんしょう)」。後弯症の中でも、加齢や骨折によって後天的に発症したものを、一般に「腰曲がり」と呼んでいます。

ではなぜ、年をとると腰が曲がりやすくなるのか。背骨の構造とともにお話ししていきましょう。