「推し活文化」やインバウンド需要も影響

近年では、「推し活文化」が実店舗のあり方をさらに変化させています。タワーレコード渋谷店では、1階に特典受け取りカウンターを設置するなど、ファンがグッズを集めたり写真を撮ったりしやすい空間づくりが進められています。ライブで使用した衣装を展示するなど、アーティストの世界観と連動した演出がファンの訪問を後押ししており、ショップ自体が「体験する場所」としての役割を強めています。

さらに、インバウンド需要も無視できません。日本を訪れた海外ファンがアナログレコードやCDを購入するケースも増えており、CDショップは観光地としても注目されつつあります。世界中の音楽ファンが聖地巡礼のような気持ちで、CDショップを訪れるのです。

このように、CDショップは単なる販売チャネルではなく、アーティストの成長ストーリーを物理的に体感できる「場」として、ライブやSNSとはまた違った接点を提供しています。デジタル時代だからこそ、逆にリアルな場所が生む熱量が再評価されているのです。

 

※本稿は、『音楽ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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音楽ビジネス』(著:鈴木貴歩/クロスメディア・パブリッシング)

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ユニバーサルミュージックのデジタル本部長として音楽配信の拡大を推進し、現在は音楽テック・コンサルタントとして活躍する著者が、音楽ビジネスの「今」と「これから」を徹底解説します。