あんな馬に巡り会ったのははじめて

笠松の最強コンビが結成された秋風ジュニアでは、レース序盤は後方に待機していたオグリキャップは、安藤が促すと一気に追い込んできて、短い直線で突き抜けた。ここまで1勝2敗と分が悪かったマーチトウショウに4馬身差をつける完勝だった。

さすがにアンカツ――。

笠松のファンは思ったことだろう。調教師の鷲見も「安藤が乗ると馬(オグリキャップ)が動いた」と語っている。ここから安藤がオグリキャップの主戦となり、連戦連勝で勝ち進んでいくのだが、当時のオグリキャップを安藤はこんなふうに評している。

重心が低く、前への推進力がケタ違いだった。あんな馬に巡り会ったのははじめて。(中略)あの時点でのオグリキャップを負かすとすれば、当時笠松の古馬の双璧といわれたフェートノーザンかワカオライデンのどちらかと思ったくらいだよ
(『2133日間のオグリキャップ』)

フェートノーザンは安藤が乗って全日本サラブレッドカップに勝った地方の最強馬の一頭である。

ワカオライデンはテンポイントの姉オキワカの息子で、中央では朝日チャレンジカップに勝ち、地方に移籍してから9戦7勝、東海菊花賞、名古屋大賞典など6つの重賞を制した名馬である。フェートノーザンとは1987年に2度対戦して1勝1敗だった。安藤はワカオライデンには乗っていないが、1995年に安藤が騎乗して中央の桜花賞(1番人気で4着)に挑んだライデンリーダーの父として知られている。

それほどの古馬の強豪でないとオグリキャップを負かせなかっただろうと安藤ほどの名手が言うのである。恐るべき2歳馬だ。