楽に勝たせてやろうという思いが裏目に

さて、安藤が乗って2戦めは重賞のジュニアクラウンだった。断然の1番人気に支持されたオグリキャップは、前走とは一転して3番手を進む先行策をとり、4コーナーで先頭に立とうとしたが、直後でぴったりとマークしてきたマーチトウショウが並びかけてくる。

直線は2頭のマッチレースとなり、一度はマーチトウショウが前にでかけたが、オグリキャップはもう一踏ん張りし、ゴールで前にでた。オグリキャップはかろうじて鼻差で初重賞を手にしたのだが、3着とは2秒の大差がついていたほど、ライバル2頭の実力は抜きんでていたということだ。

このレースについて、安藤はこんなふうに話していた。

どう乗っても勝てるんだから、楽に勝たせてやろうと3番手で先行したんです。そしたら直線でバタバタになって、最後はやっとの鼻差勝ちでした。オグリは先に行くと脚をなくしますね
(『TURF HERO'88』)

楽に勝たせてやろうという思いが裏目にでてしまったわけで、この失敗によって、安藤はオグリキャップの特性を引きだしていくことになるのだが、中央入りしてからのオグリキャップは、岡部幸雄が乗った最初の有馬記念と武豊が乗った安田記念は先行して快勝している。

ダートと芝の違いはあるが、騎手が御さないと動かない馬も多い地方競馬の騎手と、ペースや位置取りといったレース戦術が重視される中央の騎手の、感覚の違いのような感じもするのだが、のちに中央入りした安藤に、中央でオグリキャップに乗った騎手について訊ねたとき、「河内(洋)さんの乗り方(※)がいちばんオグリに合っていたと思う」と言っていたことは書いておこう。

※1988年3月6日開催のペガサスステークスでオグリキャップの騎手を務めた河内洋は、「序盤は後方に控え、3コーナー過ぎから外をまわって進出し、直線で一気に追い込む」という方法を取り、勝利を収めている。